個々のマンションによって事情が異なるため一概には言えませんが、多くの分譲マンションでは、 自身が住むマンション(の管理)について無関心な組合員が存在していると言われます。 役員が行っている活動(理事会その他)について、特に意見をすることもなく静観している組合員。 反応がないので無関心とも捉えられますが、彼らは本当に無関心なのでしょうか。
完全に無関心で他人任せ、という組合員もいる一方で、普段は無反応で意見などをしなくとも、 毎月の理事会議事録(広報誌)に目を通している、設備やマンションの外観、植栽など、 マンションの状態を日々気に掛けている、という組合員もいます。
管理組合の業務執行担当者である役員の立場からは、完全に無関心な組合員と、 関心があっても無反応な組合員はどちらも同じ「無関心な人々」に見えがちです。 そのため、管理組合として何かを決めていこうとする際に 「アンケートなどを行っても反応はないだろうから、我々役員だけで大筋を決めましょう」となることが多いようです。
総会で承認された具体的な業務を執行する場合は、役員だけで判断して業務を遂行することに何ら問題はありません。 しかし、例えば修繕工事を行うことについて総会で承認され、当該工事の請負先を選定する場合や、 金額の多寡を問わず費用負担が必要となる事項を決定する場合などには問題が生じる可能性があります。
業者選定であればその業者を選んだ理由とその過程。費用負担が生じる業務であれば、何にどれだけ必要となるか。 そしてその金額は適正か。他の手段との比較検討はしたか。など。
これらが「無関心ではない」組合員には疑問・疑念となり、それらが解消されぬまま決定がなされると、 管理組合内の大きな問題へと発展することになります。 これを回避するためにすべきこと、管理組合のあるべき運営の姿として望まれることは、組合員全員に対する情報開示と意見聴取です。 広報誌の発行やアンケート調査の実施、説明会の開催などを行い、充分な時間をかけて話し合い(意見交換)をすることが肝要です。
顔も名前も知らない全くの他人同士が話し合いをする場合と、知り合い同士が話し合いをする場合。 より活発な意見交換がなされるのは後者であることは想像に難くないと思います。 当事者である各組合員の間に交流がある場合は、その程度にも依りますが、 日頃から互いの事情や意見を知ることができるため、管理組合として何かを決定する際の合意形成をより円滑に行うことができます。
管理組合運営の指針とも言えるマンション標準管理規約(第27条のコメント)では、 「コミュニティ形成は、日常的なトラブルの未然防止や大規模修繕工事等の円滑な実施などに資するものであり、 マンションの適正管理を主体的に実施する管理組合にとって、必要な業務である。」と謳っています。
コミュニティは一朝一夕には形成されません。 趣味のサークル活動や消防訓練などのイベント、子供会など、組合員が集まる機会を少しずつでも増やし、 組合員相互の交流を促進することが必要です。良好なコミュニティの形成は、円滑な合意形成に繋がります。
総会は管理組合としての意思決定をする場であり、その場での話し合いは行われて当然ですが、 先述の「無関心ではない組合員の疑問・疑念となり得る事項」のような議案が、 それについての充分な説明と意見交換のなされぬまま上程された場合は総会が紛糾し、 他の議案も含めて何も決められない、ということにもなりかねません。
総会において決議すべき議案には事業計画など、決定されなくては管理組合の運営そのものに多大な影響を及ぼすものもあります。 総会は決議に重点を置くべきであり、特に質問や反対意見が多数出されることが予測される議案については総会の前に、 説明会や意見交換会などを開催して充分な話し合いを行う。団体としての総意を予め決定しておき、 総会では質問などが出ないようにすることが望まれます。
管理組合で物事を決める手段は多数決です。団体としての意見や方向性を決定するためには、 この手段に依らざるを得ませんが、真の合意形成という観点では、最も避けるべき手段であります。
多数決では、少数派の意見に同調した者に「敗北感」や「敗者感」を抱かせる結果になることがあります。 その場合、決定された事項(例えば新しいルールの導入)に従わないことも考えられ、 決議された事項の実効性が低いものとなって本来の目的が達せられない可能性があります。 決議は多数決で行わざるを得ない管理組合に於いて、このような事態を回避するためには、 決を採る前の充分な説明や意見交換により、組合員全員の思惑を多少なりとも反映させた議案とすることです。
合意形成に重要なことは、全ての当事者(組合員)が意見を出し合い、総意としてそれらを集約することです。 合意形成とは意見の異なる他人を説得することではない、ということに留意する必要があります。
それぞれの組合員が求める「表立った意見」だけで結論を導くのではなく、 それらの意見(要求・思惑など)がなされた背景(根本的な理由)を引き出し、 これら個々の背景を、例え僅かであっても全て包含したものを団体としての結論とする。 組合員全員が手放しで納得できるという決議は、現実的には不可能とも言えますが、 各組合員の意見が少しであっても反映されている、無視されていない、と思える結論を出すことが 各組合員に疎外感を与えることなく、また「参加している」「参加した」という意識にも繋がり、 より理想に近い合意形成となります。
このような方法は「Win-Win」という言葉で表されることがあります。 これは両者ともに(当事者全員)勝つ、或いは負けではないということ意味します。 多少の譲歩があっても自身の意見が反映されることにより、その結果には敗北感などがなく、納得できるものとなるということです。
これとは別に「Win-Loose」という言葉があります。これは当事者の一方が勝ち、他方が負けることを意味します。 この場合の負けるとは、自身の意見が全く反映されない、一方的に押し付けられるなど、納得がいかない結果になるということです。 敗者が生まれた場合の懸念や問題などは先述の通りです。
ある決議での敗者は、その決議にみに非協力的になるのではなく、その他の決議やその後の管理組合運営全てに対して 非協力的になることも考えられるため、敗者が多くなればなるほど、健全な管理組合運営が阻害される可能性が増加します。
安全・安心・快適な居住環境の確保、また建物の資産価値維持・向上のためには、組合員全員の理解と協力が不可欠であり、 そのためにも敗者を生まないこと、可能な限り「Win-Win」となる合意形成を目指すことが重要です。
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